2009年文部科学省が発表した調査では中卒と大卒の生涯賃金は8,000万円とのこと。これ数値はさらに拡大するばかりである。経済格差は先進国においてかなり深刻な問題で、社会的コスト、つまり医療、特別教育施設、犯罪率、生活保護などを増加する原因にもなる。アメリカのオバマ政権は格差を是正するために、10年に75億ドルを高品質の幼児教育に投資すると2013年教科書に発表し、先月実行した。
アメリカは決して幼児教育が先進的な国ではない。むしろOECDの加盟国中で下位である。
オバマの決断
オバマ政権が幼児教育への投資決断となる根拠は一つはPerry School / High Scopeの経年調査である。60年代からのプロジェクトで、高品質の幼児教育とそうではない施設の子供の一生を追う調査である。
以前の記事にも取り上げた。主に
- 中退率が低い
- 進学率が高い
- 犯罪率が低い
- 安定的な収入
- IQ及び学力が高い
という結果が認められた。そして、最大の利益は1ドルの投資に対して将来7ドルのリターンが得られるということ。この試算はノーベル経済賞学者James Heckman(シカゴ大学)も認めて、そして彼も高品質の幼児教育を推奨する一人でもある。(OECDも高品質の幼児教育を推奨している。)
*Perry School / High Scope以外に、The Chicago Child-Parent Centers Program、The Carolina Abecedarian Preschool programも同様な結果が得られた。
子供が9ヶ月の時既に格差が存在している
図1.収入による子供の学力格差
Dr. James Heckmanの研究による学力格差(Achievement Gap、和訳:学力差)は既に子供が9ヶ月の時既に存在しているという。この格差が解消しない限り、子供の将来も低所得者になる可能性が大きい。そして学校中退、犯罪などが起きる可能性があると示唆している。
なぜ9ヶ月で学力格差を生ずるだろう。ここでいう格差は子供の認知能力、社会性=学校への準備度合いということ。
図2.収入による子供の社会性格差
大きな要因として、母親と父親の学歴、移民者かどうか(お家で英語を使っていない)、また貧困により充分な医療を受けられないことがあげられる。Children at Risk = 取り巻く環境が育児に良くない、はオバマ政権だけではなく、イギリスをはじめとする先進国はこれを解消しようとして、様々な財政的な支援を乗り出している。
中間所得層は最も学力格差が解消できる
NIEER(国立幼児教育政策研究所)の研究によると、低所得層と高所得層の学力差が拡大するばかりだが、中間所得層と高所得層との学力差は存在しているものの、広げることなく停滞している。
中間所得層の子供は収入制限によって格安の教育サービスを受けられない一方、料金の高いインターナショナルスクールのような学校にも受けにくい。受けられる一般的な教育サービスは大勢の子供が一緒に勉強しているので、先生が一人一人子供への対応が出来ないという点。
NIEERがまとめた報告では、中間所得層の子供が高品質の幼児教育を受けることで、子供の学校への準備度合い、言葉数、認知力、社会的な行動/スキルなどが高くなったという。そして、高所得層の子供との学力差が縮まったという結果がわかった。
高品質の幼児教育の持続力
W. Steven Barnett, director of NIEERが123本の論文をまとめたところで、高品質の幼児教育は小学だけではなく、高校になってもその効果が発揮続けるという。
Dr. James Heckman(シカゴ大学)はこれについて幼少期において感情的なスキルと社会的なスキルが開発された結果といい。Dr. James Heckmanは人間のハード(学術力)ではなく、ソフト(社会性、コミュニケーション力)などを重視すべきと説いている。
高品質の幼児教育とは?
主に3つの点から評価されている。
- 少人数(生徒対先生)
- 先生の質
- 環境面
先日ある幼児教育の方とお会いして、日本において昔は一時的に幼児教育が流行っていたが、今は学力を延ばすというよりか「有名」学校に入るために勉強させている保護者が多い。学力も中身も付いてこれなくなる子供ばかりという。
Reference:
- http://www.americanprogress.org/issues/education/report/2013/06/25/67886/the-top-10-myths-about-preschool/
- http://nieer.org/resources/policyreports/report3.pdf
- http://www.childtrends.org/wp-content/uploads/2013/05/2009-52DisparitiesELExecSumm.pdf
- http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/detail/1296547.htm
- http://heckmanequation.org/